読書感想文: 「裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち」 上間陽子
上間陽子さんが書いた「裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち」を読みました。
琉球大学教育学部の仕事の傍ら、上間さんがフィールドワークとして沖縄の風俗業界で働く女性の調査を開始、その調査記録をベースにまとめられたルポタージュです。
上間さんが出会った女性たちは皆、過去に暴力や虐待、家族との別れ、非行、望まぬ妊娠などを経験しています。それでも今を生きるために十代のころからキャバクラ嬢として働いていました。
何度もひどいことに巻き込まれる彼女たちのまわりには、ひどい大人、ひどい恋人、ひどい環境があります。それでも彼女たちはその環境で生きていくしかない。
この本を読んでいると、「なんでそんな男についていくんだ」とか「もっと頼れる場所があるだろう」という考えが頭をよぎりますが、結局のところそれは明日の生活が保障された安全圏からの意見でしかないのでしょう。
この本では、上間さんと彼女たちの会話を文字起こしした部分もあり、沖縄の方言が混ざりながらの言葉は、まぎれもなく彼女たちがそこにいたというリアルを突き付けてきます。
後日談として状況が改善しつつあるという話を読んでも、それまでの経緯がひどいだけに、一旦迎えたハッピーエンドもまたどこかに落とし穴が待っているのではないか、と不安になってきます。どうか皆が幸せになってくれればと思うばかりです。
ずっと彼女たちに寄り添ってきた上間さんも、ただの支援者としてではなく等身大で彼女たちと向き合ってきたからこそ、彼女たちの本音が聞き出せたのだと思いました。優しい言葉をかけるだけではなく、ときには突き放し、またときには、ひとりで出産しようとしている女性のもとへ信号無視をしてでも駆けつける胆力。なかなかできることではないです。
シビアな話題ではありますが、この本に説教くささはありません。まずは読んで、そこにある問題を認識することが大事かなと思いました。
Amazonの商品ページ